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@kai_mutterの二次創作置き場

オタクが常にジャンルを反復横跳びしてる

君と僕とのコンフリクト
#アカタイ
タイセイと付き合ってから、ずっと『そういう関係』になりたいと思っていたものの、どうしてなのか、どうしたらいいのか悩むアカネの話。
合宿&初夜ネタです。本編13話くらいのイメージ。
※一部パスワードを設定してます。
 ヒント:『アカタイ』の略称・半角英で4文字

1. ペイ・アウェイ
2. モア・エシカル
3. ユリイカ
4. ミッドナイト・ハレーション ※18禁※
5. タイム・フライズ

トイパレード!おためしばん void展示物
開催おめでとうございます!かいです。
読みたい話のタイトルをクリックしてください。
(画像は本人が楽しむために作ったものです……)

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君と僕とのコンフリクト(アカタイ)
※一部18禁表現があります(パス有)
 その部分だけを省いて読むことができます。
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タイセイと付き合ってから、ずっと『そういう関係』になりたいと思っていたものの、どうしてなのか、どうしたらいいのか悩むアカネの話。
合宿&初夜ネタです。本編13話くらいのイメージ。


イベント・ドリブン(イナ+タイセイ)
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イナと小学生のタイセイが、ドライブしたり海を見に行ったりする話。
姉と弟の家族愛という感じですが、ほっぺにちゅーとかしてます。
本編のネタバレはありません。


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久々すぎるイベント、申し込んだ直後はひええ~~~~!!!という感じでしばらく興奮していました。
製本する元気がなかったため展示物のみですが、少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
なにかありましたら、マシュマロWaveBox から一言いただけますと幸いです。
ご返信はX(旧ツイッター) でさせていただきます。

あとがき
特権階級
・アカネ→→→←タイセイ
・14話後
・精神的な支えとしていたふたり
#アカタイ

 多分、僕は緊張していた。姉さんが帰ってきたことで、タイセイはひとつ得て、僕はひとつ失うんだと思った。
「明日からはもう大丈夫だよ、今までありがとう」だとか、タイセイに似合いの綺麗な言葉で切り返されると思って、イナさんと君がお互いに手を振り別れた時、このたった数ヶ月のことを思い出して、僕は少し肩に力が入っていたのだ。
 真夜中に突然来るメッセージも、どこにも行き場がない時に君とあてどなくさまようことも、とても好きだった。
 誰かのために時間を費やすことの幸福感は、ドーピングに似ている。依存性がある。ありがとう、助かったよ、居てくれてよかった。賛辞ではなくて、感謝の声というのは、肯定を含んでいる。言葉を飲み込むたび、もっと与えて欲しくなった。タイセイをどこか自分のために使っていた気もして、自己嫌悪に陥りながらも、また僕はタイセイのために時間をあてがっている。

 イナさんを置いてERDAを退出してから、タイセイと僕は最初、やはり彼女に関する話をした。でも、その話題も尽きて(そもそも口外できないことを外では話せないし)手持ち無沙汰になり、間もなく僕らは次の議題へと駒を進めた。
「ずっと、どうしようかなって、考えてたんだけど」
 夏服に衣替えしたばかりのタイセイは、日焼けの跡がほぼない腕で、僕を引き留めた。そうか、この二年彼は出掛ける気力もなかったのかと、当然のことを今更ながら思い、先日の言葉を今更ながら改めて悔いる。
 タイセイとあの人が、どれだけ会いたいと願っていたのか、想像に難くないじゃないか。
 握られた右手が、じっとり熱かった。上がり続ける初夏の気温の影響だと、分かっているのに。
「あの、アカネ」
 振り返れば、タイセイは言いにくそうに目を少し泳がせ、口を開く。
「これからも、前と変わらずに、僕に付き合ってほしくて」
 と、なんとも小さい声で、しかし頼りないわけじゃなくて、しっかりと嘆願した。
 僕の背に汗が流れた。
「こちらこそ、よろしく」
 焦燥感は消え失せていた。まるで告白の返事のように返してしまったのは、舞い上がっていたせいだ。僕は幸福感が欲しかった。
 このまま「好きだ」と言えたら、幸せなんだろう。
 でも、きっと一瞬で崩れる。安心して笑うこの顔を、もう見られないかもしれない。
 一か八かの賭けにしては、あまりに勝率がみえない。
畳む
幽霊よりもたちが悪い
・アカネ→→→タイセイ
・7話あたりの距離感
・気持ちタイセイ←イナ
#アカタイ

 電子音が鳴るのと、僕が「あ」と言うのは同時で、本当に一瞬のこととはこういう時のことを言うのだと初めて知ったような、驚きと発見と「やられた」が入れ代わり立ち代わりやってきた。
 電子決済の終了を告げてから、自販機が商品をがたたっと吐き出す。取出し口からペットボトルを引き出すアカネを、ただただ眺めるしかない僕は、無言のまま棒立ちでちょっと肩身が狭い。彼のスマホに仕事を横取りされ、行き場をなくした僕のスマホは、役割を果たせなかったことに嘆いて(ビーナだろう)ぶるぶる震えている。
「お詫びじゃないけどね」
 アカネが差し出す。表面についた露が、廊下の照明に反射して星みたいに光った。真昼なのに、ボトルのパッケージが暗い色のせいで、どこか夜みたいにつやめいている。
「ノート、データを送信してくれてありがとう」
「別にそれくらい」どうしようもないのでボトルを受け取る。「気にしなくて良いのに」
「押し付けられたと思って貰っておいて」
 先日、アカネが私用で欠席した授業の件なのだとすぐに気づいたけれども、こういった経験がなくて、正直返答に困った。最初から最後までスマートな心遣いに、ありがとう、が正しい気もするけれど、それだと同じ言葉を返すだけになってしまって、何かが食い違っているのだ。嬉しいのだけれど――と思い至ったところで、それでいいじゃない、と誰かの声が聞こえた気がする。いいじゃない、自分を信じれば。頭を撫でる感触とともに蘇る声は、十中八九、幻聴だ。
 でも、幻でも、僕だけに届いた声だった。
 だから「嬉しい」と答えた。浮かんできた、そのままの言葉だった。今の僕にとっての正解だった。
 見上げれば、アカネが頬をほころばせている。あ、間違いじゃなかったんだなあ。正しいと思えることがひとつ増えて、僕の中の正解が溜まっていくのが分かる。そう実感すると、まるで相手との距離が縮まったみたいで、また嬉しくなった。

 ボトルの結露が手のひらから落ちて、ひとつぶ床にこぼれた。外気との温度差が激しいのか、今日は暑いね、と言おうとしたところで、ぬっと影があらわれた。手の中の、星が隠れる。
 タイセイ、と名前を呼ぶ声がする。さっき聞こえた懐かしい声よりも、ずっとずっと低いもので、するりと僕の髪を揺らした。
「善意が必ずしも善意だけとは、限らないよ」
 耳打ちされた声は、僕を無力にするには絶大なちからを持っていて、言いかけたすべての言葉は消えてしまった。アカネが立ち去る間際、最後に、何かが僕の頬に触れた気がしたけれども、その時の記憶があまりない。というのも、ビーナが叫び出すまでずっと僕は、廊下に突っ立っていたのだった。
 暑かった。汗が首筋を伝って、ぞくぞくした。空調は効いているはずなのに、昇降口が開けっ放しのせいか生ぬるい風があたりを満たしていて、僕の腕に、脚に、まとわりついている。
 僕は何かを、間違えてしまったのだろうか。
畳む
あなたはわたしのたいせつなひと
・ビーナの話
・あったかもしれないタイセイとの過去

 ただ、砂がスマートフォンの中に入ってきませんように、とビーナは祈っていた。
 充電が切れたとしても問題はないけれども、故障と物理的破壊だけは勘弁願いたかった。運動場の片隅で溜息をつく。ただし空気は震えなかった。黒い画面の奥底で、溜息をつくふりをしただけだ。人間的な所作をいくつか学習させられたおかげで、言われなくとも十分自覚があるほどには憎たらしいAIに『成長』している。擬態はお手の物だった。
 無人の、空白を詰め込んだような校庭は薄暗い。垂れ込めた紺色の雲とともに、春の夜の足取りがそろりそろりと近付いてくる。先ほど受信した天気予報のとおり、夜は雨が降るようで、ビーナは現在地の湿度を再確認した。
 雫が落ちてくるまでに、早くあたしを見つけてよ。
 孤独というものを感じることができたなら、きっと今の思考を指すのだろう――独り言つAIの心理をくみ取るものはいない。邪魔の入らない場所でひとり、ビーナの学習は加速していく。
 人間は面倒くさい。大成イナが不在となってからの自分の持ち主、つまり彼女の弟を見ていれば、自明の理だった。悲しみに打ちひしがれて言葉も発せず、他人に信用されず、呼吸だけを繰り返す日常ではなくなった日常の繰り返し。あたしの言葉なんてあんまり聞いちゃいないのよね。彼女と違って子どもだし、あー面倒。でも、それ以上に憎たらしいのは、あたしか。
 生みの親が大成イナでなければ、感情モデルがやけに発達したAIにはなっていなかったかもしれない。でも、そうならなかった。イナはビーナを単純なナビゲートAIとしなかったのだから、仕様どおり口が達者で何が悪いのよ、と思う。
 開発者の意思がそこらじゅうに散らばる宇宙を、思考の源泉を、ビーナは闊歩する。生まれたデータがひとの模倣品であったとしても、その宇宙にひとつしかない、自分の答えだった。
 ひとが親を選べないように、あたしも選べなかっただけ。だから、あんたと話してるのにね。
 
 近付く音には覚えがある。メモリの中に何度も記憶された持ち主の足音であり、今のビーナにとってまごうことなき救世主だ。
「ビーナ、ビーナ……あっ!」
 やっと来た。
「タイセイ! もう、遅いよ!」
「ごめん、ほんと、ごめん! 全然、どこか分かんなくて……」
 覗き込んだ少年の、肩で息をする様子に、ない胸がちょっと痛んだ。彼が自分(が格納されたスマートフォン)を発見するまでの約一時間、どれほど忙しなかったか分かる。つられて、ビーナの文句も止む。指先で砂をはらう少年は、髪が乱れていた。
「あいつら……今度会ったらただじゃ置かないんだから」
 スマートフォンのバイブレーションが震えたのは、ビーナが命令したからだ。「うわっびっくりした」驚きの声が上がるが、どうでもよかった。怒りの回路が処理の大半を占めてしまっていたので。
 タイセイのスマートフォンを取り上げた、意地の悪い学生の顔をメモリ内から引っこ抜く。その情報へ『ブラックリスト入り』のフラグを追加して、またメモリに書き込んだ。指紋認証によるロックがかかっていたから実害があったわけではなかったものの、手が滑ったとはいえ、教室から校庭にスマートフォンを落下させた罪はビーナにすれば重罪だった。植栽がなければ壊れてたわよ!
「ごめんね」
 唇を噛むようにしながら、タイセイが口にする。しかし釈然としなかった。ちょっかいを出してきた同級生に非があるのは明白で、タイセイはただ自分と会話していただけなのだから。
「どうしてあんたが謝るのよ、あいつらが悪いんじゃない!」
「え、どうして……ビーナが、辛かったんじゃないかと思って」
「なによそれ、全然平気だったわよ!」
「わっ」
 スマートフォンの最大音量で声を張り上げるビーナに対し、早く立ち去れと言わんばかりに風が強まる。辛かった、なんて、人間じゃあるまいし!



 タイセイの寝息がようやく聞こえてきて、ビーナは電気信号の世界を漂う。前に見た、遊泳する宇宙飛行士ってこんな感じなのかしら、と思わなくもない。舞台が終わりのない闇か、終わりのあるデータか、違いはあるものの。
 記憶領域から、タイムスタンプがもう一年も前の会話履歴を引っ張り出して、参照する。音声データの参加者は、ビーナの他に大成タイセイ、と記録に控えてあった。嫌なことがあった夜は、以前の記録を振り返ると、感情の計算ロジックを効率化できる気がしていた。
『ねータイセイ』
『なに』
 今よりほんの少しだけ幼い少年の声がする。
『さっきから何を一心不乱に入力してんのよ』
『わかんない』
『わかんないって、ここに姉ちゃんって、めちゃくちゃ書いてあるじゃないの』
『……忘れるから、言いたいこと書いてるだけ』
 ――この時のタイセイはたしか、彼女への「帰ってきたら言いたいことリスト」を作ってたわね。
 しばらくの間、前後の記録を開いては閉じて眺めて、ビーナは思考を整理する。泣いていた少年、わがままを言う少年、眠れない夜を別世界で過ごす少年。どこにでも自分はいた。大成イナのかわりみたいに、ただ存在していた。
 もし、ひとであったなら。あたしはきっと手を繋いだ。頭を撫でてあげた。抱き締めてあげられたのよ。ひとであったなら。
 それはできないけど、ひとじゃないけど、ちゃんとあたし、近くにいたのよ。これからも、消されるまでは居座り続けてやるわよ。だって、『彼女』に選ばれたんだから。
 宇宙を漂いながら、ビーナは目を閉じるふりをした。機能があるからといって、AIにだって予測したくない時はある。そんな日はただ思い描くだけだ。まるで夢のように、希望のように。



(了)畳む
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