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@kai_mutterの二次創作置き場

オタクが常にジャンルを反復横跳びしてる

アンドロイドがどう出すのか考えた結果の産物(18禁)
スーパーヒーロー!
・珍しくギャグ。
・みんな高校生のとんでもパラレル。
・みんな遊星が大好きなんだ……。
#現代パラレル

「はっ!」
 不動遊星は突如として上半身を机から引き剥がした。バネ仕掛けのように飛び上がった彼は制服の上着の内ポケットへと右手を突っ込み、ぶるぶる震えるスマートフォンを取り出す。それは画面に『!!』とエクスクラメーションマークを二つ表示していた。赤色のエマージェンシーコール。呼んでいる! あいつが!
「出動だ!!」
「ちょっ遊星どうしたよ」
「済まないが鬼柳このBLTサンドはお前の胃袋に収めておいてくれ」
「ええーまたかよ俺もう食えねぇよ」
 右手で軽く敬礼に似た挨拶をして遊星は教室を飛び出した。共に昼食を取っていた鬼柳京介は何度目になるか分からない親友の後姿を見遣りながら、「あぁこんなにも世間は平和なのになんでなのかね」と思いつつBLTサンドを口へ突っ込んだ。既に弁当一つとペットボトルのコーヒーを半分ほど入った腹には少々きついのだが。
 廊下を駆け抜ける遊星はさながら鼬のようだ。するすると昼休みを自堕落に過ごす学生達の間をすり抜けて、三年生の靴箱のある南玄関へと向かう。自分達二年生はあまり行くことのない場所だが、彼には馴染みが深くなりつつあった。その理由は先のエマージェンシーコールだ。助けが必要なあいつが三年だから。
「ブルーノ!!」
 あいつ、とは、今まさに遊星の目の前で胸倉を掴まれている身長がやたらと高い青年のことである。
「やめてよやめてよ暴力反対! ……あっ遊星!!」
 涙目で自分に掴み掛かる男に両手を揚げて抵抗する(その意志を示しているだけだが)ブルーノは、廊下の奥から差し込む後光を受けて仁王立ちしている遊星を見て顔を綻ばせた。遊星が来てくれたのだ、僕のために! 大好きな彼が!! 輝く彼の胸倉を掴んでいる金髪の男はその右手の力を強めた。ぐえっとブルーノの声が上がる。
「お前また遊星を呼んだのか! 軟弱者めが!!」
「ジャック、今すぐその手を離すんだ。でなければ俺はもうお前と回し飲みはしない」
 長いもみ上げが特徴的な男、ジャックは遊星のその言葉にぴたと動きを止め、振り下ろさんとばかりに掲げていた左手をすっと下げた。ブルーノの制服を掴んでいたもう片方の手もすぐさま離れる。
「遊星、お前いい加減にこいつのことは放っておけ」
「ブルーノは俺の大切な先輩であり尊敬するメカニックだ。そんなことできるわけないだろう」
「遊星……!!」
「うぐうぁぁお前の口からそんな言葉を聞きたくはない!! いいか覚えておけブルーノ!!」
 ぎりぎりぎりと拳を握り締めるジャックにひいっと怯える。そんなブルーノの青い髪を少し背伸びしてよしよしと撫で慰める遊星は、はたと現状とは全く関係のないあることを思い出してジャックを呼び止めた。
「あ、ジャック」
「なんだ遊星? 俺と一緒に授業を受けたいなら一言言えば、」
「違うそもそも同じクラスじゃないだろ」
 先程とは打って変わって上機嫌で振り向いたまでは良かったのだが、即否定する遊星にジャックのハートがちょっと傷付く。幼馴染の遊星は自分に少しばかり冷たい気がするのは気のせいだろうか。
「鬼柳が、放課後部会をやると言っていた」
「……分かった」
 こくりと神妙な面持ちで頷く。それから踵を返し、ジャックは自分のクラスへと戻るため肩をいからせつつその場を後にした。去りゆく友人を見送ってから、遊星は壁に凭れかかるブルーノの顔を覗き込んだ。疲れ果てているその表情に、遊星の顔も少し曇る。
「大丈夫か? ブルーノ」
「あぁ、大丈夫……ごめん、いつも呼び付けちゃって……」
「良いんだ、別に四六時中のことじゃないだろう。それよりジャックがいつも迷惑を掛けて済まないな」
 苦笑して、遊星は自分の携帯端末を撫でた。所々画面が割れているスマートフォンは、ブルーノが遊星を必要としている時に威力を発揮する。と言っても特別な仕掛けが施されているわけではなく、ただ何らかの助けを求めている時に通知するだけのことなのだが、それはジャックにしばしば脅されるブルーノにとってのライフラインであり遊星との絆の証でもあった。彼にとって遊星は共に所属する『メカ開発同好会』の後輩であると同時に自分の救世主であるから。
 同好会を維持するために必要なメンバーが足りず困り果てていた時、「今までこんな同好会の存在を知らなかった、是非入れてくれ」と遊星が名乗り出てきたのは、ブルーノが三年に進級した春のことだ。それから意気投合した二人はコンテストに出場するために作品を開発したりだとかで行動を共にすることが多くなった。そのうち、ブルーノに妬いたジャックが何かと突っかかってくるという関係図が出来上がり、今日も今日とてジャックを宥めることのできる遊星に助けを求めてブルーノは彼のスマホを鳴らすのであった。

 時間は流れ放課後、部室棟の二階の端の部屋には二年生四人、遊星、ジャック、クロウ、鬼柳が集まり顔を突き合わせていた。部屋の中央に四つ並べられた学生用の机と今彼らが座っている椅子は年季が入っており、壁に寄せられたホワイトボードには良く分からない落書きしか描かれていない。
「いいかおめぇら! 今日が何の日か知ってるか?」
 ばん! と机を両手で叩く鬼柳の顔は鉛でも味わっているかのように険しい。が、そんな彼を揶揄するように向かいに座るクロウが一言零した。
「聞かれるまでもねぇし。つか俺と遊星は関係ねぇっつうのに何で呼ばれなきゃなんねぇわけ?」
「クロウ君俺それはひどいと思う」
「だってお前とジャックだけじゃねぇか関係あるの」
 ちら、と右斜め前に座っているジャックを見遣ると、彼は正面の遊星をにやつきながら眺めていた。こいつ話聞いてねぇな。腕時計を確認すると既に時刻は夕方の四時十五分を過ぎたところで、鬼柳とジャックが招集される時間まで残り十五分弱しかない。クロウは立ち上がって顎をしゃくる。
「おら、もうすぐ時間だろが」
「そうだぞジャック。鬼柳も、途中まで付いていってやるから、ほら」
 あやすような遊星の口調にもジャックは首を縦に振らない。
「嫌だ俺は行かんぞ」
「何その幼稚園に子供送る親みたいなの」
 ぷいと拗ねるジャックに遊星とクロウの溜息が漏れた。それからやれやれという風な遊星の声がジャックに圧し掛かる。
「元はと言えば二人がテストで赤点三つ取ったからだろう」
「そうだぜ俺と遊星はクリアしたってのによー」
「うっせえぇぇ俺は頑張ったんだよおおぉぉ!! 大体ジャックだって落としてんじゃねぇか!!」
「黙れ鬼柳!! 偶々試験問題と馬が合わなかっただけだ!!」
「いやたかがテストに馬も何もないだろ」
「クロウの言う通りだ、往生際が悪いぞジャック。草抜きくらいすぐ終わるだろう。というかそれをサークル活動にカウントするのはどうかと思うんだが」
 サークルというのは、彼ら四人で構成される総合ボランティアサークル『チーム・サティスファクション』のことを指す。鬼柳が「どデカいことをやるにはボランティアして満足するしかねぇ!」と言い出したのがきっかけで、普段の活動としては本日これから鬼柳とジャックが従事する成績不良者による自主校内草抜きであったり、遊星の町内の知り合いから依頼される清掃活動であったり、クロウの知り合いの子供達が多数通う小学校の演奏会参加などである。つまり基本的には雑用をこなすサークルである。ちなみにサポーターとしてブルーノが影で協力してくれていることは遊星以外知らない。
「なー草抜き終わったら夜弾けてもいい? いい?」
「猫撫で声止めろ鬼柳。そうだな……最近夜回りしてないからな。久々に良いんじゃないかと思うんだが、クロウはどう思う?」
「俺さんせー」
「俺もだ」
「ジャックは遊星が居りゃ何でも良いんだろ」
「そうとも言うな」
 クロウの腕時計は既に四時二十分を知らせている。鬼柳とジャックが放送で呼び出されるまであと十秒足らず。



次回予告
ある日の夜、不良狩りのボランティアに夜の街へくり出したチーム・サティスファクションのメンバー達は、夜なのにグラサンをかけた長身の男と出会う!手には学校一厄介と言われる生徒会長プラシドの姿が! 奴は一体何者なのか!? 果たして彼らの運命は!?
という話があるかもしれない畳む
君は僕の中心であり世界の全てであり僕の全てだった
・145話の話。
#ブル遊

 ボクの奥底に沈む沢山の記憶が、きらきらと、ブラックホールの中で輝いているように思えた。宇宙の深淵に浮かび上がった遊星が伸ばした手。取ってしまおうか、でもそれを選択することは彼と心中することを意味しているから、ボクにはできなかった。彼はボクの最後の希望。ボクの全てなのだから。もしもボクらが全く違う世界で、あるいは同じ時代、例えば過去や未来で出会っていたならば、一体どんな結末を迎えていただろう。若しくは出会わずに過ぎていたならば、ボクらは。
「ブルーノ!!」
 遊星の叫びを聞きながら手元のスイッチを押した。これで本当にお別れだね、遊星。辛さも苦しみもぜんぶぜんぶ受け止めてボクと向き合ってくれた強いひと。君は選択した。だから、ボクはこの結末を受け入れる。君の手が掴んだ未来がボクの未来でなくとも、そこに一縷の光があるなら、ボクは君を信じるよ。
 悲鳴を上げたデルタイーグルに申し訳ないと思いながら、最後のアクセルシンクロを行う。光。眩しい、希望の色。遊星の色。君はまさしく、ボクらの中心だった。きっとどんな邂逅の形であろうとも今の君には敵わないだろう。歯車の一つでも不動遊星という軌道を周回できるのは、君が今の君であるからこそだ。可能性という不確かなものを信じるに足る存在だからだ。押し込めたデルタイーグルは限界寸前だった。おかしな音が聞こえる。ごめん、もう少しだけ耐えてくれ。
「ブルーノ! ブルーノ!!」
 加速する光。減速するボク。遊星。きっとボクの声は届いていない。それでもボクは君の名を呼ぶ。君がボクを、ブルーノと呼んでくれたから、ボクはボクでいられる。世界から切り離されて、あらゆる束縛も届かないところから、ただ、ボクはブルーノという個体で君の名前を叫ぶ。
 希望の名を。



ありがとうとさよなら そしてまたね畳む
アニマルポッポ
・みんなアニマルな世界でつまりはパラレルです。
・見た目耳生えてるだけ。
#パラレル

 少し離れた場所から友の匂いがして、クロウは俄かに走り出す。こういう時ピアスンに仕込んでもらった走りが役に立つぜ! 疾風のように走り抜ける三毛猫に驚いて電線から鳥達が飛び立った。すぐそこに居ることは間違いない、あの角を曲がれば恐らくは。
「遊星ー!!」
 ぎゃぎゃあっと靴底をアスファルトに擦りながらブレーキをかけた。曲がり角の先には黒い耳をぴっと立てた親友が茶色い紙袋を片手に抱えて振り向いている。「あぁ、クロウ。こんなところに居たのか」と言いながら徐に紙袋の中に手を突っ込んだかと思うと、遊星は円形の菓子をクロウに差し出した。
「うほっ! それそれやっぱりそれか! 向こうに居たらお前の匂いと一緒にその匂いが混ざってきたんだぜ」
 ここのドーナツ美味いよなぁと今にも涎が垂れそうな表情で遊星の隣に並ぶ。が、その視線は既に親友ではなくその手にある紙袋に注がれていた。そんな様子に遊星の口元には微笑が浮かぶ。
「さすがはクロウだな。食べないか?」
「言わずもがな!」
 粉砂糖の掛かった生地の上にチョコレートをトッピングしたドーナツにクロウの目はきらきらと輝く。うまそう! がふ、と大口で齧り付いたドーナツはクロウの口の中で重奏を奏で、彼を至福の中へと浸した。ビターチョコレートと粉砂糖の甘さが柔らかい生地を包み込み舌の上で蕩ける。その味にクロウの茶と黒が混じった耳がへたりと垂れた。
「うめぇ……」
「良かったな」
「サンキュー遊星。つかそれ結構な数買ったな、どっか持ってくのか?」
 むぐむぐと味わいながら遊星の持つ紙袋を指差す。ぱっと見ただけでも十個以上はありそうな大きさだ。
「あぁ、差し入れだ」
「えっいいのかよ俺もらっちまって」
「一個くらい構わないさ。俺も今自分用に食べたところだ」
 ぺろりと唇を舐める遊星は子供のような笑顔を浮かべている。マーサハウスに居た頃にも見たことがあるその表情に懐かしさを感じた。
「どこに持ってくんだ?」
「あぁ、ブルーノにな。今俺のバイクのメンテナンスを手伝ってもらっているんだ」
「俺が出掛ける時にはブルーノ居なかったぞ?」
 同居人のことを思い描きつつクロウは首を傾げる。
「ちょうど部品を買いに行ってくれていたんだ」
「そっか……って、ジャックも居るんじゃねぇの? また喧嘩すんじゃね?」
「ジャックには喧嘩したらドーナツは抜きだと言っておいた」
「あ、さすが遊星……」
 話しながら歩いているうちに遊星達の住居兼作業場に着いた。後ろから昼の日光を浴びながら扉を開けると、そこにぬぅっと壁があって遊星は反射的にびくっと身体を震わせる。
「遊星! おかえり!」
 その壁にがばりと抱きすくめられれば馴染んだ匂いが遊星を包む。ブルーノだ。豊かな毛を備えた尻尾を一回転しそうな程ぶんぶん振り回しながら遊星に擦り寄る。
「ブルーノ……度々こうするのは止めてくれ……」
「あ、ごめん習性で。待ってたら遊星の匂いと足音がしたからさ……あれ? クロウもおかえり」
「俺はついでかよ」
 まぁいいからさっさと中に入れ。そう嗾けるように遊星の背を押すと、付属品であるブルーノも共に進む。ブルーノのふさりとした垂れ耳がひくひく動いており、それが遊星から発せられる音の一つ一つに集中していることは、常日頃から彼を知っているクロウには分かっていた。そして室内で仁王立ちしているジャックが、その尻尾の様子から今にもキレそうだということも。
「クロウも一緒か。用事は済んだのか」
 話しながらもジャックの目線は遊星とブルーノに向けられている。視線に気付いた遊星がブルーノをあしらいながら「ほら、ドーナツだぞ」と紙袋をジャックに手渡した。その瞬間、ジャックの尻尾がふにゃりと緩む。色々と扱いが上手い遊星にはほんと感心するぜ。
「ふん! 別にドーナツの為に留守番していたわけではない!」
 とか言いつつ即紙袋広げるのはどうなのよ。三人のやり取りを肩越しに観察していたクロウは、四人分のコーヒーを用意しながら個性的な同居人等との行く末をぼんやりと考えた。



猫組:遊星(黒猫)、クロウ(三毛猫)、ジャック(虎猫)、アキ(ロシアンブルー)
犬組:ブルーノ(大型犬)、鬼柳(野良出身)、双子(子犬)、青山(こいつ絶対雑種)
というイメージです。
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かたどり
・アンチノミーさん×ゾーン様前提ぽい。
#ブルーノ #ゾーン

 全く同じ人間を造り出すことができると、私は思っていません。それは神でさえ不可能なことであると分かっています。だから私はせめてその模造品を生み出そうとしました。えぇ模造品なのです。いくら見かけを似せても中身は違う。ならば中身を似せてみたら今度は心が異なりました。それを知った瞬間、記憶というものは人間が持つ機能の中で最も煩わしいものであると思いました。もし私が自分の記憶を操作できるのであれば、と考え出してもしまうのです。それは何故かと言いますと、停止を知らぬ時間の波に攫われて、私にとって唯一無二の存在が霞のように消え去ることが恐ろしいからなのです。
 「ゾーン、何故ボクを見てそんなにかなしい目をするの?」
 虚空の色をした目で、青年は心配そうに私を見ました。そのやさしい心すら私によって再び世界へ呼び戻されたものであると思うと、どろどろとした我欲やら怨恨やらが私の内部からぼこりと溢れ出て、申し訳なさも交じり合ってどうしても目を細めてしまうのです。思い出と呼ぶには些か美しくない過去に立つ凛々しい青年の姿が脳裏に浮かんで、恰も彼自身が居るかのような錯覚を覚えてしまう。命の終わりを自分で見届けたにもかかわらず。それは誠におぞましいことでした。それは私に希望を与えるのです。彼が再び私の元へ戻ってきてくれた、という、有りもしない幻想を抱かせるのです。希望が生まれた瞬間、同時に絶望も生まれます。だから私は絶望を抱かぬようにひしと両目を閉じてから、改めて青年に向かい合いました。
 「何でもありません。さぁ貴方には大切な役目があります。しかしその前に、一つだけお呪いをかけておきましょう」
 「おまじない?」
 と、子供のように聞き返す青年の、その蒼穹の髪に、醜くも金属にまみれた腕を翳しました。時間は永遠に止まらぬ砂時計です。無慈悲なまでにただの傍観者として流れてゆく。それを実感させられるのが自分の腕を見る時でした。
 段々と焦点の定まらなくなってゆく目をしながら、青年は必死に、縋るように私に手を伸ばしました。けれども私には青年に返す手などありませんでした。
 「ゾーン……ボク、は……君を……」
 貴方は何も知らなくて良いのです。私の過去も、世界の未来も、そして自らのことでさえ、貴方にとっては無関係の御伽噺にしか過ぎません。
 けれども、その透明な魂だけは残しておきます。それは私と、貴方の原型である彼との、最後の共有物なのですから。畳む
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