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@kai_mutterの二次創作置き場

オタクが常にジャンルを反復横跳びしてる

君は僕の中心であり世界の全てであり僕の全てだった
・145話の話。
#ブル遊

 ボクの奥底に沈む沢山の記憶が、きらきらと、ブラックホールの中で輝いているように思えた。宇宙の深淵に浮かび上がった遊星が伸ばした手。取ってしまおうか、でもそれを選択することは彼と心中することを意味しているから、ボクにはできなかった。彼はボクの最後の希望。ボクの全てなのだから。もしもボクらが全く違う世界で、あるいは同じ時代、例えば過去や未来で出会っていたならば、一体どんな結末を迎えていただろう。若しくは出会わずに過ぎていたならば、ボクらは。
「ブルーノ!!」
 遊星の叫びを聞きながら手元のスイッチを押した。これで本当にお別れだね、遊星。辛さも苦しみもぜんぶぜんぶ受け止めてボクと向き合ってくれた強いひと。君は選択した。だから、ボクはこの結末を受け入れる。君の手が掴んだ未来がボクの未来でなくとも、そこに一縷の光があるなら、ボクは君を信じるよ。
 悲鳴を上げたデルタイーグルに申し訳ないと思いながら、最後のアクセルシンクロを行う。光。眩しい、希望の色。遊星の色。君はまさしく、ボクらの中心だった。きっとどんな邂逅の形であろうとも今の君には敵わないだろう。歯車の一つでも不動遊星という軌道を周回できるのは、君が今の君であるからこそだ。可能性という不確かなものを信じるに足る存在だからだ。押し込めたデルタイーグルは限界寸前だった。おかしな音が聞こえる。ごめん、もう少しだけ耐えてくれ。
「ブルーノ! ブルーノ!!」
 加速する光。減速するボク。遊星。きっとボクの声は届いていない。それでもボクは君の名を呼ぶ。君がボクを、ブルーノと呼んでくれたから、ボクはボクでいられる。世界から切り離されて、あらゆる束縛も届かないところから、ただ、ボクはブルーノという個体で君の名前を叫ぶ。
 希望の名を。



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