から

@kai_mutterの二次創作置き場

オタクが常にジャンルを反復横跳びしてる

詐欺師の館
・Mr.ハートランドとカイト。
・VJ版の捏造。
・きっとギャグ。
#カイト

 この糞爺! と、声を大にして叫んでやりたかったが、その瞬間脳裏に命よりも大事な弟の顔が浮かんで、カイトはぐっと苦々しい怒りを飲み込んだ。この野郎、狸、エセインテリめが。心中であらゆる罵倒を浴びせながら、ハートランドシティの中枢部、その一室でカイトは足元で自分を見上げている鉄の塊に目を遣った。
「カイト様、カイト様」
 大きい虫眼鏡みたいなレンズ。その奥で何を考えているのか知らないが、存在自体にハートランドの妙な意図を感じてカイトの眉がひそめられた。オービタルセブン、とハートランドは呼んだ。貴方にも助手が必要でしょうからね。
 俺を監視する為だろうが。助手とか言いやがって、胸糞悪い。
 舌打ちして、カイトのブーツの踵が機械の胴体を蹴り上げる。「ワアア」と悲しいのかよく分からない人工的な声を上げオービタルセブンは壁際まで吹っ飛んだ。ごろごろごろごろごろがしゃんごとん。「カイト様、ヒドイ」どうやらこの程度では壊れないようだ。カイトは鼻で笑った。
「おやいけませんね。乱暴はどの時代でも崩壊を招くのですよ」
 その時、部屋の入口から聞きたくなかった声がして、カイトの目に苛立ちの炎を宿らせる。
「Mr.ハートランド……すみません、言うことを聞かなかったので、つい」
「君を守る為にもオービタルセブンは必要なのですよ。君を守ることはつまり、ハルトを守ることに直結している……解りますね?」
「……はい」
「それは何より」
 かつかつと、革靴が規則的な足音を刻む。
 カイトはこの部屋が嫌いだった。自室として与えたくせに、造りは徹底的に無駄を排除し、そこに居る人間を管理していますと言わんばかりの空虚さ。冷たい壁は閉じ込める為の氷の蓋。そう思えてならない。
「カイト」
 ハートランドが目の前に立つ。足元に落とされていたカイトの視線が、ハートランドの指先によってぐんと上げられる。
「君が頼るべき聖典は私だということを忘れないよう」
「……はい」
 自分の顎に触れるハートランドの手を振り払えない。その悔しさで涙が滲みそうになり、カイトは奥歯をぎりりと噛み締めた。それを気にする風もなく、まるで人形を可愛がるかのようにハートランドはカイトの頬を一撫でした。感触にカイトの背にぞわりと悪寒がはしる。一挙一動が気色悪いんだよ触れるな離れろ!
「カイト。ハルトの為にも、君は殉教者であるべきなのです」
 ハルト。ハルト。ハートランドが口にする弟の名は恐ろしいほどの効力を発揮する。カイトを縛り、従順にならざるをえなくさせる。それを最も理解しているのがカイト自身だった。宝物の名前を出されては、カイトは笑みを浮かべながら自分を見下ろす男にこう答えるしかないのだ。
「は、い」
 糞野郎絶対シメる。
 オービタルセブンは壁際で転がったままである。畳む