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@kai_mutterの二次創作置き場

オタクが常にジャンルを反復横跳びしてる

世界のしくみ
#ブル遊

 まるでパズルを組み立てるように、或いは地球儀をくるくると指先で弄ぶように、自分が呼吸している場所について簡単に理解できたら、ボクはきっとこんなにも苦しみ足掻きもがいていないだろう。潮の香りを抱き込み、波打ち際にしゃがんで水平線を眺めた。区切られた空と海の境目がきらきら輝いていた。宝石を一粒ずつ並べたみたいに薄っすら光を放つ其処から、世界は間も無く眠りから目覚めるだろう。沢山の人間が息衝くこの世を照らすために、何度も何度も夜は明ける。
「ボクもいつか、目が覚める時が来るのかな」
「何の為に?」
「分からないけど」
 そう答えると、左に座る遊星が僅かに笑みを浮かべてボクを見た。曖昧な表情にボクは少し心細くなって、彼の右手を握り直す。
 本当は何の為に目覚めるか知っている。けれどもまだ君には言えないから、ボクは君と同じように曖昧に笑ってみせた。そうすれば君と同じ気持ちで居られるような気がしたから。真実を告げることが不可能ならば、いっそのこと残酷なまでに埋没させてしまった方がきっといい。知らないままで居ることはぼやけた希望を知るよりも簡単だ。ただ裏切り行為みたいで胸が痛むけれど。
「夜が明けるな」
 遊星の呟きに合わせて朝日が現れた。そこから爆発しそうな程鮮烈な白の周辺に朱色が滲んで、重苦しい夜をこじ開けていく。水面に反射する光はプリズムを介して拡散したようだった。「何度見ても飽きない」遊星の声が海原に溶けていく。溢れた光はあっという間にボク達を飲み込もうと躍起になる。白い怪物に食われて失わないように、ボクは咄嗟に左手を引っ張って遊星を抱き寄せた。それは薄暗かった砂浜を一気に曝け出させて、ボク達の居場所を消失させる。遊星を抱き締めて守りながら、ボクは世界の仕組みを理解しようと必死になった。今ボクは此処に存在している、それだけは真実だと遊星に伝えて。畳む