薄明・これ の幕間。※R15くらい。了見の自慰です。#Ai遊 #了遊 #現代パラレル 続きを読む薄明 時々見る夢は吐きそうなほど後味の悪い寝起きをもたらす。その日も例にもれず、起きた時には了見のなかで消化不良の熱だけが残り、くすぶったまま、しかしどうすることもできずにベッドから降りるまで時間を要した。片想いというような青春じみた言葉では到底言い表すことのできない、幼馴染へと向ける凝り固まった劣情は、一体のアンドロイドを製作してから日に日にひどくなっているように思えた。その原因を生み出したのが自分自身である事実が、余計に拍車をかけるのだった。自分で自分の首を絞めるようなことを何故したのか、と自問する夜が続くと、大抵その次の日には夢の中で藤木遊作を抱いている。 了見、了見了見、好きだ了見。膨張する自己に苦しみながらも離れがたいと絡む肉体が、夢とは思えないほどの立体感を持ちながら自分の身体を求めてくる。最高で最悪な夢のなかでは自由になれるのだった。現実では決して耳にすることのない言葉を紡ぐ遊作をどこまでも溶かしてやって、好きなだけキスをしてやることはとても気分が良い。いつ終わるかも知れない麻薬のような夢で、自分が生きている間には口にできない心のうちを音にする。行動にする。一番近い場所で、ずっと藤木遊作を眺めていたかった。 それを止めたのが自分なのだからお笑い種だ。Aiはもうずっと、遊作の隣で、自分より近い場所にいる。 遊作がAIを造るとは予想できなかった。家族を持とうとしたことまでは理解できる。欠けた愛情を、抱えていた孤独と掛け合わせてしまったことが誤りだ。遊作には、愛情を理解するために必要な愛情を与えられるプロセスが足りていなかった。どこまでも自分の内部へと落とし込むことしかできないままでは、その孤独感はいつか青年を破綻させる――データに『容器』を用意したことは青年を人間たらしめるには正しかったはずだった。けれども遊作と自分との間に、予測の中では発生し得ない第三者を生み出してしまったのだ。 鴻上了見にしてみれば地獄絵図だった。 フラストレーションが自分を焼き続ける。しかも生憎その日はアンドロイドのメンテナンス日ときたものだ。整理しきれない感情の暴風雨に苛まれながら遊作とAiを出迎えることになったために、あんな暴挙に出てしまったのだろうか。 遊作とAiを置き去りにしたものの、どこか外に出るわけにもいかず(一人と一体を放置はできない)自室に閉じこもることにした。ベッドに腰かけると、ひとりになれたことに少し安堵している自分がいる。思春期の高校生か、と失笑した。 だが、いまだその口元に残るのは、遊作の唇の感触だ。唇は冷たかった。舌は熱かった。気持ち良かった。 股間に手を伸ばすと、ひどい状態の陰茎がインナーを押し上げていた。消えたい気分だ。 何を今更後悔しているのだろう? 遊作に人型を与えて、家族ごっこを許しておいて、同意も得ずにキスをして――ぐったりと寝そべって前をくつろげると充分に勃起した自身が空気に晒される。とにかく吐き出したかった。指を絡ませる。まるで夢の中で遊作がしてくれたみたいに、夢想して、ただ欲求のもとに手を動かした。 遊作、遊作。 了見。幻聴が聴こえる。了見。そこに混じる、一刻前に耳にした掠れた遊作の呼吸。小さな熱波のような息で刻まれた自分の名前。永遠に聞くことができないと思っていた、乱れた声。唇を重ねた瞬間から了見の中では欲情が留まるところをしらない。決壊した愛欲がだらだらと流れ出て、ひらすら遊作に触れたかった。 もしあの場にAiが横たわっていなかったならば、自分は決別を以て遊作に強いていたかもしれない。喉仏をさらけ出し、淫猥になる青年を求めていただろう。あたかもあの夢のように。そうして誰も知らない遊作を自分の手であぶり出してやりたい、もしかするとそれさえ許してくれるのではないか――なんと身勝手で低俗な男なのだろうか。手を上下させながらみっともなく喘ぐ遊作を描き続けた。されるがままに蹂躙されているはずが、了見のほうが追いやられている。もうどこにも逃げ場のない戦場に、青年達は立っている。 置いてきぼりにされた研究室で、遊作は今、どんな心地で立っているのか。本当は知りたい、訊ねたい、とても恐ろしいことだけれど。万が一にでも「もう一度」と手を伸ばしてくれたならば。ありえない可能性を探し続けて、気が付けば遊作とAiが研究所をあとにしていた。扉の開閉を検知した防御システムが小さなアラート音を鳴らした。ああ、帰っていくんだな。当たり前か。 一人になって、了見の掌にはいっそう昂った熱が篭もった。は、は、と水を求める獣のような呼吸が私室に響き渡る。遊作に口付けた時とは比べものにならない膨張した炎が、青年を内側から責め立てる。遊作。了見。頭がおかしくなりそうだ。あの最悪な夢の最高な青年の瞳が、今日口付けた遊作に重なる。れろ、と舌を絡ませた時、混乱しながらも応じてくれた時、私がどれほど歓喜したか知るまい! どうして今日、遊作を帰してしまったのだろう? アンドロイドを停止させておいたならば帰すこともなかったのではないか? そしてこの場所に連れてきて(まるで子どもの頃のように手を繋いで)体感したことのない快楽を二人で貪れば良かったのではないか?――すべてがただの願望に過ぎないとは分かっていても、畢竟夢の中では自分が正義である。閉じた瞼の裏側で、後ろから肉体を穿たれる遊作に圧し掛かる。深く侵略してくる了見に抗うことなく「あ、ひあ、あぁ」と声を上げる青年の背に、謝罪の言葉が浮かんでくるのは何故だろうか。 すまない。そう思っても、決して謝ることはない。謝るくらいならば自分はアンドロイドを造る前に、遊作へ伝えなければならなかったのだ。「……う、……はぁっ……は……――」 吐き出した精はどろどろと了見の手を汚した。この陰湿なまでの愛を遊作に与えたらどんな表情をするのだろう? 夢から醒めた目で見下しながら、いつかこの目に焼き付けたい、そんな欲が生まれていた。畳む VRAINS 2023/07/13(Thu)
・これ の幕間。
※R15くらい。了見の自慰です。
#Ai遊 #了遊 #現代パラレル
薄明
時々見る夢は吐きそうなほど後味の悪い寝起きをもたらす。その日も例にもれず、起きた時には了見のなかで消化不良の熱だけが残り、くすぶったまま、しかしどうすることもできずにベッドから降りるまで時間を要した。片想いというような青春じみた言葉では到底言い表すことのできない、幼馴染へと向ける凝り固まった劣情は、一体のアンドロイドを製作してから日に日にひどくなっているように思えた。その原因を生み出したのが自分自身である事実が、余計に拍車をかけるのだった。自分で自分の首を絞めるようなことを何故したのか、と自問する夜が続くと、大抵その次の日には夢の中で藤木遊作を抱いている。
了見、了見了見、好きだ了見。膨張する自己に苦しみながらも離れがたいと絡む肉体が、夢とは思えないほどの立体感を持ちながら自分の身体を求めてくる。最高で最悪な夢のなかでは自由になれるのだった。現実では決して耳にすることのない言葉を紡ぐ遊作をどこまでも溶かしてやって、好きなだけキスをしてやることはとても気分が良い。いつ終わるかも知れない麻薬のような夢で、自分が生きている間には口にできない心のうちを音にする。行動にする。一番近い場所で、ずっと藤木遊作を眺めていたかった。
それを止めたのが自分なのだからお笑い種だ。Aiはもうずっと、遊作の隣で、自分より近い場所にいる。
遊作がAIを造るとは予想できなかった。家族を持とうとしたことまでは理解できる。欠けた愛情を、抱えていた孤独と掛け合わせてしまったことが誤りだ。遊作には、愛情を理解するために必要な愛情を与えられるプロセスが足りていなかった。どこまでも自分の内部へと落とし込むことしかできないままでは、その孤独感はいつか青年を破綻させる――データに『容器』を用意したことは青年を人間たらしめるには正しかったはずだった。けれども遊作と自分との間に、予測の中では発生し得ない第三者を生み出してしまったのだ。
鴻上了見にしてみれば地獄絵図だった。
フラストレーションが自分を焼き続ける。しかも生憎その日はアンドロイドのメンテナンス日ときたものだ。整理しきれない感情の暴風雨に苛まれながら遊作とAiを出迎えることになったために、あんな暴挙に出てしまったのだろうか。
遊作とAiを置き去りにしたものの、どこか外に出るわけにもいかず(一人と一体を放置はできない)自室に閉じこもることにした。ベッドに腰かけると、ひとりになれたことに少し安堵している自分がいる。思春期の高校生か、と失笑した。
だが、いまだその口元に残るのは、遊作の唇の感触だ。唇は冷たかった。舌は熱かった。気持ち良かった。
股間に手を伸ばすと、ひどい状態の陰茎がインナーを押し上げていた。消えたい気分だ。
何を今更後悔しているのだろう? 遊作に人型を与えて、家族ごっこを許しておいて、同意も得ずにキスをして――ぐったりと寝そべって前をくつろげると充分に勃起した自身が空気に晒される。とにかく吐き出したかった。指を絡ませる。まるで夢の中で遊作がしてくれたみたいに、夢想して、ただ欲求のもとに手を動かした。
遊作、遊作。
了見。幻聴が聴こえる。了見。そこに混じる、一刻前に耳にした掠れた遊作の呼吸。小さな熱波のような息で刻まれた自分の名前。永遠に聞くことができないと思っていた、乱れた声。唇を重ねた瞬間から了見の中では欲情が留まるところをしらない。決壊した愛欲がだらだらと流れ出て、ひらすら遊作に触れたかった。
もしあの場にAiが横たわっていなかったならば、自分は決別を以て遊作に強いていたかもしれない。喉仏をさらけ出し、淫猥になる青年を求めていただろう。あたかもあの夢のように。そうして誰も知らない遊作を自分の手であぶり出してやりたい、もしかするとそれさえ許してくれるのではないか――なんと身勝手で低俗な男なのだろうか。手を上下させながらみっともなく喘ぐ遊作を描き続けた。されるがままに蹂躙されているはずが、了見のほうが追いやられている。もうどこにも逃げ場のない戦場に、青年達は立っている。
置いてきぼりにされた研究室で、遊作は今、どんな心地で立っているのか。本当は知りたい、訊ねたい、とても恐ろしいことだけれど。万が一にでも「もう一度」と手を伸ばしてくれたならば。ありえない可能性を探し続けて、気が付けば遊作とAiが研究所をあとにしていた。扉の開閉を検知した防御システムが小さなアラート音を鳴らした。ああ、帰っていくんだな。当たり前か。
一人になって、了見の掌にはいっそう昂った熱が篭もった。は、は、と水を求める獣のような呼吸が私室に響き渡る。遊作に口付けた時とは比べものにならない膨張した炎が、青年を内側から責め立てる。遊作。了見。頭がおかしくなりそうだ。あの最悪な夢の最高な青年の瞳が、今日口付けた遊作に重なる。れろ、と舌を絡ませた時、混乱しながらも応じてくれた時、私がどれほど歓喜したか知るまい! どうして今日、遊作を帰してしまったのだろう? アンドロイドを停止させておいたならば帰すこともなかったのではないか? そしてこの場所に連れてきて(まるで子どもの頃のように手を繋いで)体感したことのない快楽を二人で貪れば良かったのではないか?――すべてがただの願望に過ぎないとは分かっていても、畢竟夢の中では自分が正義である。閉じた瞼の裏側で、後ろから肉体を穿たれる遊作に圧し掛かる。深く侵略してくる了見に抗うことなく「あ、ひあ、あぁ」と声を上げる青年の背に、謝罪の言葉が浮かんでくるのは何故だろうか。
すまない。そう思っても、決して謝ることはない。謝るくらいならば自分はアンドロイドを造る前に、遊作へ伝えなければならなかったのだ。
「……う、……はぁっ……は……――」
吐き出した精はどろどろと了見の手を汚した。この陰湿なまでの愛を遊作に与えたらどんな表情をするのだろう? 夢から醒めた目で見下しながら、いつかこの目に焼き付けたい、そんな欲が生まれていた。
畳む