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@kai_mutterの二次創作置き場

オタクが常にジャンルを反復横跳びしてる

アニマルポッポ
・みんなアニマルな世界でつまりはパラレルです。
・見た目耳生えてるだけ。
#パラレル

 少し離れた場所から友の匂いがして、クロウは俄かに走り出す。こういう時ピアスンに仕込んでもらった走りが役に立つぜ! 疾風のように走り抜ける三毛猫に驚いて電線から鳥達が飛び立った。すぐそこに居ることは間違いない、あの角を曲がれば恐らくは。
「遊星ー!!」
 ぎゃぎゃあっと靴底をアスファルトに擦りながらブレーキをかけた。曲がり角の先には黒い耳をぴっと立てた親友が茶色い紙袋を片手に抱えて振り向いている。「あぁ、クロウ。こんなところに居たのか」と言いながら徐に紙袋の中に手を突っ込んだかと思うと、遊星は円形の菓子をクロウに差し出した。
「うほっ! それそれやっぱりそれか! 向こうに居たらお前の匂いと一緒にその匂いが混ざってきたんだぜ」
 ここのドーナツ美味いよなぁと今にも涎が垂れそうな表情で遊星の隣に並ぶ。が、その視線は既に親友ではなくその手にある紙袋に注がれていた。そんな様子に遊星の口元には微笑が浮かぶ。
「さすがはクロウだな。食べないか?」
「言わずもがな!」
 粉砂糖の掛かった生地の上にチョコレートをトッピングしたドーナツにクロウの目はきらきらと輝く。うまそう! がふ、と大口で齧り付いたドーナツはクロウの口の中で重奏を奏で、彼を至福の中へと浸した。ビターチョコレートと粉砂糖の甘さが柔らかい生地を包み込み舌の上で蕩ける。その味にクロウの茶と黒が混じった耳がへたりと垂れた。
「うめぇ……」
「良かったな」
「サンキュー遊星。つかそれ結構な数買ったな、どっか持ってくのか?」
 むぐむぐと味わいながら遊星の持つ紙袋を指差す。ぱっと見ただけでも十個以上はありそうな大きさだ。
「あぁ、差し入れだ」
「えっいいのかよ俺もらっちまって」
「一個くらい構わないさ。俺も今自分用に食べたところだ」
 ぺろりと唇を舐める遊星は子供のような笑顔を浮かべている。マーサハウスに居た頃にも見たことがあるその表情に懐かしさを感じた。
「どこに持ってくんだ?」
「あぁ、ブルーノにな。今俺のバイクのメンテナンスを手伝ってもらっているんだ」
「俺が出掛ける時にはブルーノ居なかったぞ?」
 同居人のことを思い描きつつクロウは首を傾げる。
「ちょうど部品を買いに行ってくれていたんだ」
「そっか……って、ジャックも居るんじゃねぇの? また喧嘩すんじゃね?」
「ジャックには喧嘩したらドーナツは抜きだと言っておいた」
「あ、さすが遊星……」
 話しながら歩いているうちに遊星達の住居兼作業場に着いた。後ろから昼の日光を浴びながら扉を開けると、そこにぬぅっと壁があって遊星は反射的にびくっと身体を震わせる。
「遊星! おかえり!」
 その壁にがばりと抱きすくめられれば馴染んだ匂いが遊星を包む。ブルーノだ。豊かな毛を備えた尻尾を一回転しそうな程ぶんぶん振り回しながら遊星に擦り寄る。
「ブルーノ……度々こうするのは止めてくれ……」
「あ、ごめん習性で。待ってたら遊星の匂いと足音がしたからさ……あれ? クロウもおかえり」
「俺はついでかよ」
 まぁいいからさっさと中に入れ。そう嗾けるように遊星の背を押すと、付属品であるブルーノも共に進む。ブルーノのふさりとした垂れ耳がひくひく動いており、それが遊星から発せられる音の一つ一つに集中していることは、常日頃から彼を知っているクロウには分かっていた。そして室内で仁王立ちしているジャックが、その尻尾の様子から今にもキレそうだということも。
「クロウも一緒か。用事は済んだのか」
 話しながらもジャックの目線は遊星とブルーノに向けられている。視線に気付いた遊星がブルーノをあしらいながら「ほら、ドーナツだぞ」と紙袋をジャックに手渡した。その瞬間、ジャックの尻尾がふにゃりと緩む。色々と扱いが上手い遊星にはほんと感心するぜ。
「ふん! 別にドーナツの為に留守番していたわけではない!」
 とか言いつつ即紙袋広げるのはどうなのよ。三人のやり取りを肩越しに観察していたクロウは、四人分のコーヒーを用意しながら個性的な同居人等との行く末をぼんやりと考えた。



猫組:遊星(黒猫)、クロウ(三毛猫)、ジャック(虎猫)、アキ(ロシアンブルー)
犬組:ブルーノ(大型犬)、鬼柳(野良出身)、双子(子犬)、青山(こいつ絶対雑種)
というイメージです。
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