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@kai_mutterの二次創作置き場

オタクが常にジャンルを反復横跳びしてる

無駄遣いしてド叱られる京介
・親子パラレルの小話。
・京介くんはダークシグナーの影響を受けているようです。
#京遊 #現代パラレル

【設定】
京介くん(18)→育ち盛りの高校生
遊星さん(28)→京介くんの義父



「おい京介!!」
「あぁ? んだよ今忙しいって、」
「これを見ろ!!」
 天高く馬肥ゆる秋。つまり、美味しいものが山のように出てくる季節でもある。食い気の多い京介にとってはまさに天国。しかしそれは家計を仕切る遊星にとっては四苦八苦、常に頭を捻るか首を捻るかである。
 帰宅後制服から着替えずに即ゲームに齧り付いていた京介は、テレビから視線を動かさずに返事だけを返した。その背後ではスーツの上着だけを脱いだ遊星が肩を震わせている。画面に釘付けの京介からボタンを連打されていたコントローラーを取り上げる。代わりに遊星の手から持たされたのは、A4サイズの一枚の紙だった。
「あっおいこら!!」
「これをよく見ろ!」
「なんだこれ」
「よ、く、見、ろ!!」
「んー……先月の出費一覧表……?」
 紙の一番上には太字でそうでかでかと明記されており、上から光熱費、食費など、一覧表で記載されている。その表をずっと下へ追っていくと、最後に赤字で『-35,074』と書かれていた。つまり文字通り赤字である。
「……で?」
「で? じゃない!! 先月のお前の食いっぷりは何だ! 肉、魚、その他諸々高級食材ばかり買いこんできていただろう!!」
「スーパー行くとちゃんと書いてあるぜ? 『オススメ品』って。だから買ってやってんだよぉ」
 売上貢献してんだからありがたく思えよなぁー。そうのたまった京介に遊星の怒りゲージが着々と増加していく。こいつ……! ただでさえ京介は出費の多い生活(買い物兼買い食いをして帰宅後はゲーム)をしているのだ。社会勉強を兼ねて買い物担当を任せたのがいけなかったのか。俺の教育は間違っていたのか。と、遊星は自分の頭を抱えた。
「いいじゃねぇか。遊星も美味いもの食いたいだろぉ?」
「健康的な食事を心掛けているんだ!」
「あーもうすぐ会社の健康診断だもんなぁー三十路手前は大変だぁははははは」
「くっ……黙れ!!」
「へーへーもーしわけございませんでしたぁー」
「こ、の……!」
 この瞬間、遊星の中で堪忍袋の緒が切れた音がした。ぶちん。ぽちっ。遊星の人差し指が素早くゲーム機の電源を切った。
「ああああああああああ!! セーブしてねぇんだぞこらぁ!! おい遊せ、」
「黙れこの馬鹿息子。今晩は飯抜きだからな」
「はぁ!?」
「ゴミ箱見たぞ。またお月見ハンバーガーセット買っただろ。なら飯はいらないな」
「ちょ、おい、」
「じゃあ俺はもう一度会社に戻って仕事でもしてくる。お前のために深夜残業して金を稼いでこなくてはな」
「おい待てって!」
 すたすたすたすた。上着と鞄を抱えて玄関へ向かう遊星に、京介は慌てて立ち上がり追いかける。勢いで彼の淡いスカイブルーの髪が跳ねた。これはやばいマジギレモード!
「悪かったって!!」
 ぴたり。後ろから叫ばれた言葉に遊星の足が止まる。焦りを目一杯含んだ謝罪の声。肩越しにちらりと振り返り、遊星の目が京介の様子を窺う。何がだ? 視線がそう聞いていた。
「う……」
 こういう時の遊星が苦手だ。京介がもう少し幼かった頃から、遊星は教育的指導を行う際は大抵今のような目をして叱ってきた。この瞬間も遊星は京介の精神へと無言の圧力をかけてくる。それは京介の記憶に刷り込まれた過去の同じ経験を呼び起こす。こういう時に自分はどう対処してきたか? どうすれば義父が許してくれるか? その結果は。
「……む、無駄遣いは、あまりしねぇように、する。相談、する。悪、かった」
「よし」
 結局しどろもどろになりながら自分の非を認め、遊星に詫びることになるのだ。
 よしよし今日も教育がうまくいった。悔しがりながら項垂れ髪を掻きむしる京介の姿に、遊星は一人心中で満足するのであった。畳む